東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~

「じゃあ、スグその方に入っていただいてかまわないから」

「了解です♪」

「いい? これ以上、お客様に失礼のないようになさい」

そう行って店の奥のほうに入っていく彼女。


その姿が完全に見えなくなってから、あたしは小声で“アンドレ”と呼ばれた男の人に言った。

「…あの女の人、なんか、すごくエラそう…」

「…ココのボスだから、実際エラいし…」

彼も小声で答えてた。

「でも、あのヒト、怖くない?」

「ソレ、微妙に日本語の表現が間違ってるよ。ボスは“怖い人”じゃなくて、ただ“厳しい人”ってだけなんだ」

「ふぅん、あたしには“怖い人”にしか見えないけど…。ホント、日本語って難しいね」

「“日本語、難しい”って、ヤッパ外国人?」

「外国人じゃなくて“帰国子女”」

「へぇ、いいなぁ。ずっと外国で生活してたなんて……ふぅん……」

そう言って遠い目をする彼。その目はきっと海外で暮らす自分の姿を夢見てるんだろう。
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