東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
「フフッ」
美容師アシスタントくんのほのぼのとした感じが、さっきまで凹んでいたあたしの気持ちを思いがけなくリラックスさせた。
「じゃあ、おしゃべりはこれくらいにして、そろそろカットのほうをお願いしてもよろしくって?」
「ご、ご、ごめんっ。じゃあ、こちらの席へどうぞ」
夢から覚めたアシスタントくんは、あたしを空いている席までエスコートすると、手際よくカットの準備に取りかかった。
…っていっても、このヒトはアシスタントだからカットはできないし、たぶんさっきの怖い女ボスが髪をカットするんだろうけど。
「実は俺、クリスさんが店に入ってきたときから思ってたんだけど…」
目の前の鏡の中には、あたしの後ろに立っているアシスタントくんの姿が見える。
「…すごく……綺麗だな」
「えっ!?」
彼の思いがけないひとことに、言われた瞬間、うかつにも“ドキッ”としてしまった。