東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
「ホント、綺麗だ。なんか見とれちまいそうなカンジ」

そのひとことで、あたしはコロッと落ちた♪

たったひとことで、いともたやすく恋に落ちた♪

…ような気がする。


「なんか天使みてぇ」


「そ、そんなこと…」


あたし、綺麗? 天使みたい?

とたんに胸がドキドキしはじめ、こうなるともう鏡の中の彼のことさえ、まともに見れなくなってしまう意外と純情なあたし。


「ツヤツヤしてて、光を反射して頭のまわりに“天使の輪”みてぇのができてんじゃん。よく手入れの行き届いた綺麗な髪だな」


「綺麗な髪…? なんだ、髪のことか……」

ドキドキして損した。

でも墜落するほどのショックはない。あたしも女だ。“綺麗な髪だ”と言われれば、そりゃあ嬉しい。

だけど、そんなフワフワした夢心地を、次に発した彼のひとことがブチ壊し、あたしをイッキに現実の世界へと引き戻した。
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