東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~

“なんだ…夢だったのか……”


髪をアップにした“うなじ”がオンナのあたしから見ても妙に色っぽくて、甘ったるい香水の香りに混ざって、いわゆるオトナの女の色香みたいなものを、そこはかとなく漂わせているCA。

男のヒトたちがCAの女のヒトに対して、ついついやらしい妄想をいだいてしまうのも分かるような気がした。

もちろん、あたしにはソッチのほうの気(け)はないけど……。

「ごめん、起こしちゃったね」

やさしく微笑む美人のCA。

「いいえ…」

「まだ東京までは長いから、もうひと眠りするといいわ」

「ありがとう」

うん、とうなづいて見せると、また別の乗客のもとへと向かうCA。おしつけがましさがなく、そのさりげない気配りが、いかにもプロの仕事という感じだった。


ま、なにわともあれ、ロムから感じた“女のニオイ”はCAのものだった、ってことだ。


NY~東京間の直行便のフライト時間はおよそ12時間。
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