東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~



「いかがです?」

「はい、すごく気に入りました♪」

さすがは彼に“天才”と言わしめるだけのことはある。

実質、軽く“シャギー”を入れただけなんだけど、もともと髪の毛の量が多くて、ちょっとでも油断するとモコッてしてたから、シャギーを入れたカットをしてもらったおかげで、見た目もスッキリ、気持ちもサッパリしちゃったあたし♪♪

あたし、シャギーを入れるのって生まれてはじめての体験なのに、そんなあたしに“すごくイイ感じで似合ってる♪”って思わせちゃうあたり、さすがだと思う。

もう、前のヘアースタイルが思い出せないくらいだし。

たしか芸能人で、こーいうヘアースタイルのヒトいたよね?

「じゃあ、安堂くん、あとシャンプーお願いね」

「はい」

天才美容師は彼に引継ぎを頼むと、自分の見事な腕を自慢することもなく、静かに、だけど颯爽と店の奥へと姿を消した。


「そんじゃ、いっちょシャンプーでもやっときますか♪」
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