東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~

「知るかよ、そんなのアダ名を付けた本人に訊いてくれ」

類は友を呼ぶなんていうけど、彼もネーミングセンスないけど、友達もホント、センスないよね。

「ともかくだ。人前で俺のことは“アンドレ”と呼ぶなよ。いいか? 絶対に呼ぶなよ」

「なんで? “ベルサイユのなんとか”みたいでカッコいーじゃん?」

「フランスでそう呼ばれるならともかく、日本でそう呼ばれるのは恥ずかしいんだよっ」

「じゃあ、なんて呼んだらいいワケ?」

「フツーに名前で呼べばいーじゃん? “安堂”でも“巧”でもどっちでもいいよ」

いかにも面倒くさそうな言い草だった。

「じゃ、アシくん♪」

「俺はクリスのアッシーくんじゃねぇし、そもそもソレ、選択肢にないしっ」

「美容師アシスタントだから、略してアシくん♪ アシくんがイヤなら“アンドレ”って呼ぶよ♪」

「や、ヤメロ。それだけはやめてくれ」

“アンドレ”と呼ばれるのがよほどイヤなのか、真顔で焦ってるのが逆に笑える。

「じゃ、アシくんでいいよね?」

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