東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
「5時半開場とか言ってただろ? もうとっくにライブハウスに到着してるよ」
「行ってみないと分かんないじゃん! あたし、死ぬ前に1度でいいからホンモノのマッキーに会いたい! マッキーに会えたら死んでもいいし!」
言い終わるなり、イチゴショートを大口を開けてバクバク食べるあたし。
その様子を見て彼が呆れたように「お前さ、そんなにがっつくなよ」と言う。
さっきの女のコたちに出遅れたことで、なんだか気ばかりが焦っていたあたしは、そんな彼の態度にイライラしてしまった。
「アシくんも早くコーヒーなんか飲んじゃいなよ! 早くしないと置いてくよ!」
「へいへい……ったくコーヒーくらいゆっくり飲ませろっての。人使いが荒いんだから」
そう言いながら彼の手が、あたしが最後に食べようと思って残していたショートケーキの上のイチゴに、伸びてくる。
「アッ!」
あたしはDVDの早送りのようなスピードで、彼の手の甲を思いっきりつねり上げた。
「イタイ、イタイ、イタイっ!」
ツネツネは小っちゃい頃からのあたしの必殺技だ。