東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
「お前さ、突然、機嫌がよくなるのな」

われながら実に単純だと、ちょっと情けなくなるけど。

「さっきライブのとき、思いっきり歌って、カラダ動かしたから、実はおなかペコペコで」

「なに喰いたい? あ、でも高級フランス料理とか、イタメシとかは、さすがに予算オーバーかな…」

ちょっと弱気な彼の発言。



「あたし、焼き肉が食べたい♪ 美味しい焼き肉屋さんに連れてってよ♪」



「“焼肉”ってお前、オッサンかよ。天下の女子高生がそんなこと言うもんかねぇ」

あたしの発言が彼にとってはスゴク意外だったみたい。

「だって焼き肉屋さんってオトナなイメージがある、ってゆーか、若い女のコひとりじゃ、ゼッタイ行けない場所じゃん?」

あたしはかねがね、もし、いつか誰かに「なんでも好きなものを食べに連れていってあげる」って言われる日が来たら、ゼッタイに「焼き肉屋さん」って答えようって思っていたんだ。

「ひょっとして焼き肉屋さんだと予算オーバー?」

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