東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
「よかったね、アシくんも、これでまたひとつお利口さんになったわけだ♪」

「ウルセー、その上から目線ヤメロって」

「フフフッ…」と思わず笑みがこぼれた。

「そんじゃ、ちゃんと意味を理解したところで、あらためましてヒア・ウイ・ゴー!」

再びグーを突き挙げる彼。


そんな彼を見て、通行人のOL風の女のコたちがクスクスと笑った。

“うわっ…恥ずかしい……”

そう思ったあたしは彼と距離を置いた。


「おい、クリス。早く焼き肉、喰いに行こーぜ」

そんなあたしの気も知らないで、ノンキそのものの顔であたしのほうに近づいてくる彼。

「もぅ…知り合いだと思われたくないから、コッチにこないでよっ」

「おっ…それが今からメシおごってやろう、っていう相手に対して取る態度かよ」

「はいはい…分かった分かった……」

とにかくあたしは彼の手を引いて、ライブハウスの前から離れることにした――――



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