東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
一時的に人けのなくなったホームに取り残された情けない二人。
ビィーン、ビィーン…
そのとき不意にポケットの中のケータイがバイブで振動した。
でも、どーせプロフに送られてきた中傷メールか、それかキクチ・ヨーコか、ユーからのものだと思ったあたしは、もはやポケットから取り出してみることさえしなかった。
「俺さ、実はデートのしょっぱなのときから、ずっと気になってたんだけど、なんでシカトこいてんの?」
実は彼とデートしているあいだも、ほとんど数分おきにケータイがバイブで振動してた。
“マナーモード”なんて言ってはいるけど、結局、振動するときの音が聞こえるから、まわりの人だって気になってしまうのが実情ってヤツだ。
「いいの。どーせ、くだらないメールか、電話がかかってきてるだけだから」
「ひょっとしてお前の親からじゃね? お前がこんな時間まで家に帰ってこねぇから、親が心配してんじゃねぇのか?」
「え…」
親のことなんて頭の片隅にもなかった。