東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
でも彼に言われてちょっと気になって、ポケットからケータイを取り出してみると、本当に親からの電話だった。


一瞬のためらいのあと…、


“ピッ”と着信ボタンを押すあたし。


「よかったァ」

あたしが「もしもし」を言う前に、ママがホッとひと息つくような感じで言った。

「ねぇ、愛、今どこにいるの? こんな時間まで帰ってこないし、何度かけても全然電話に出ないから、あたしもパパも心配して、警察に電話しようかと思ってたのよ」

よほど、あたしと話したかったのか、堰(せき)を切ったようにものすごい勢いでしゃべりまくるママ。

「ごめん、今、友達と渋谷でライブ観てて……だから電話に出られなかったんだ」

「友達ってユーちゃん?」


「うん、ユーといっしょだよ」


電話でコッチの様子が見えないのをいいことに、あたしはウソをついていた。

17歳にしては親離れができていないってゆーか、あたしは今まであまり親にウソをついたことがなかった。
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