東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
じゅう~…
今あたしの目の前で、いろんな種類の焼き肉たちがユラユラと煙を上げ、香ばしい香りを漂わせながら、そして肉汁をしたたらせながら焼けている。
カルビ、ロース、タン、ハラミ、ミノ、ハチノス、センマイ、ギアラetc…
今まで17年間生きてきたけど、親に焼き肉屋さんなんて連れて行ってもらったことがなかったあたしにとって、その空間はまるで異世界で、肉の種類の名前なんて、ある意味、未知の外国の単語みたいだった。
だから、慣れたカンジで焼き肉を注文できるアシくんをマジで尊敬していたりもする。
「うわ、美味しそう♪ この煙がまた食欲をそそるね♪」
「念願の焼き肉だろ? さぁ、喰えよ」
「いただきまァ~すっ♪♪」
“パクっ”とクチに入れた瞬間、特製のタレと混じり合った濃厚な肉汁がクチの中いっぱいに“じゅわ~っ”と広がって、噛むと肉の繊維質をほとんど感じないくらいに柔らかくて、喉の奥へと吸い込まれていくような錯覚に陥るくらいだった。
「ねぇ、コレ、ヤバイって…ヤバイよ、ウマ過ぎだよ♪」