東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~

「クリスもさ、早くオトナになれよ。そしたら、月に一度くらいはこうやってウマイ焼き肉が喰えるってもんさ」


「無理だよ、あたし、あと少しで死んじゃうし……」


「………」

あたしが言ったひとことで彼が突然、黙りこんでしまった。


じゅう~…


黙りこんでる二人の間で、ただ肉が焼ける音だけがしている。


やがて、おもむろにクチを開いて彼が言う。

「ま、あと少しで死ぬなら、なおさら、ハラいっぱいに肉喰っとけよ……」

「………」

「もう肉を見るのもイヤだってくれぇ……思い残すことがねぇように喰っとけ……」

「………」

「もし、あとで全部ゲロっても、俺が面倒みてやるよ……」

「………」

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