東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
あたしは彼の言葉を信じた。

いや、もし彼がウソをついて手を出したとしても、もう抱かれる覚悟はとっくにできてるから、それはそれで別にいいし……。


「じゃ、俺はシャワー浴びてくるから、お前は先に寝てろ」

「分かったよ。じゃ、おやすみ」

「おやすみ」

そう言ってバスルームに入ってしまう彼。


たしかにあたしは「おやすみ」と言った。

だけど、いくら服を着たまま、文字どおり“寝る”だけとはいえ、ひとつの蒲団に入ってダブルベッドに男のヒトとふたりで寝るんだ。これは緊張して、きっと朝まで一睡もできないぞ。…ってかゼッタイ無理っ!

そんなことをアレコレ妄想しているうちに、いつのまにあたしの意識がなくなってた。

アチコチ歩き回ったし、ライブで大きな声で歌ったり、飛んだり跳ねたりしたから、そーとー疲れてたんだろうと思う。


いつシャワーから彼が戻ってきたのかも気づかないまま、結局朝までグッスリ爆睡してしまったみたい。

朝起きたとき、着衣の乱れはなかったから、寝てるあいだにヘンなこととかはされなかったみたい。ヤッパ彼はいいヤツだ――――
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