東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
そして曲のイントロが流れはじめた。
「うわ、スッゲェ、愛のメールがホントに読まれてんじゃん!」
まるで自分のことみたいに、すごく興奮気味に言う巧。
「でしょ、でしょ~♪」
あたしはもう今朝までに何度も何度も聞き直していたから、彼ほどは興奮していないけど、それでも聞き返す度に、最初のオンエアで聞いたときの感動が、たった今起こったばかりの出来事のように、あたしの中に鮮やかによみがえってきていた。
「でも、お前もアレだな」
「え?」
「律儀とゆーか、バカ正直とゆーか。俺、昨夜のオンエア聞けなかったんだし、“メールなんて読まれなかったよ”って言っとけば“賭け”はお前の勝ちだったのに」
「いいの。あたし、もう巧にウソはつきたくないし」
「そっか。じゃ、余命は今夜0時までとか、そーいうウソはもう二度と言わないんだな?」
「うん。あのときはホント、午前0時で死んでしまうつもりだったけど、でも今は死にたくないって思う。もっとこれからも生きていたい、って思うよ」