東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
「なら、自殺願望はなくなったワケだ?」

「自殺なんて、これからまだまだやりたいこといっぱいあるのに、死んだりしたらもったいないよ」


ホントにそう思う。

心の底から、そう思う。

もしも、あのとき巧に出逢わなかったら、こんな気持ちにはならなかったと思う。

クチに出して言うのは恥ずかしいから、そっと心の中で言うね、

“ありがとう、巧。あなたはあたしの命の恩人だよ。あなたがいなかったら、今のあたしはいないと思う。本当にありがとうね”



「じゃあ、あたし、なにしたらいい?」

「ン?」

「賭けに負けたほうは勝ったほうの言うことをなんでも聞く、って約束だったじゃん? メールがラジオで読まれた以上、敗者のあたしは巧の言うこと、なんでも聞かなくちゃいけないわけでしょ?」

「そうそう、ソレソレ♪」

「でもね、あのときはまさか本当に読まれると思わないから勢いでつい“賭けに負けたら、スッポンポンで渋谷駅前のスクランブル交差点を逆立ちして歩いてあげる”なんて言ったけど、あれだけは許して。お願いだから」

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