東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~

パンと両手を合わせると、ウインクして彼にお願いするあたし。


「そっか。じゃあ、ソレの半分だけしてくれ。それが勝者としての俺からの命令だ。命令は絶対遵守、Noとは言わせないぜ」


「“ソレの半分だけ”って?」

「今度、俺の仕事が休みのとき、渋谷駅前のスクランブル交差点を俺といっしょに歩いてほしいんだ。ただし服は着たまま、逆立ちもしなくてフツーに歩いてくれればいいから」

「え? ソレってフツーに渋谷の町を歩いてるだけじゃん」

「そっ。だからフツーに俺とデートしてくれればいいんだよ」

「…!」

そのとき、あたしはハッとした。


コレってひょっとして単なるデートのお誘いってコト?


「頼むから、今度またデートしてくれよ」

そう言って今度は彼が両手を合わせる。

「なァ~んだ、そんなこと、おやすい御用よ♪ 今度も、その次も、何度でも、デートくらいしてあげる、っつーの♪」


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