東京エトランゼ～通りすがりの恋物語～

あたしのほうからお願いしたいくらいだよ。


「でもな、俺の仕事は土・日・祝とかカンケーなしの仕事だから、世の中のカップルみてぇに毎週末、会ってデートみたい感じにはいかねぇと思うんだ。実際、今日だって日曜なのに仕事だから、わざわざ愛に、開店前のこんな朝早くに来てもらったし……ホント、その点はすまねぇと思ってるよ」

そう言って、申し訳なさそうに目を伏せる彼。

「なに言ってんのよ。そんなことはとっくの昔に覚悟できてるしNever mind！（ネバーマイ!）気にしないで。巧は美容師なんだから、そんなの、しかたないじゃん」

彼に余計な気を回させたくなくて、あたしはワザと全然気にしていないような、明るく、そして軽い感じで言ってあげた。

「そっか、ありがとな」

そんなあたしの思いが通じたのか、彼は顔を上げて笑ってみせてくれた。

「そもそもさぁ、巧が美容師だったから、あたしたちは出逢うことができたんじゃん？」

「そーいわれてみりゃあ、そうだな」

「Let it be（レット・イッツ・ビー）あるがまま。無理しないでいいよ。巧はそのまま、あるがままの巧でいいから。あたし、あるがままの巧が好きだから」

話の流れで思わず言ってしまったけど、でもこれは軽い気持ちなんかじゃない。マジで本気な気持ちだから。