東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
あたしと同じクラスになったことを覚えていないのか、それともわざとなのか、とにかく彼女はそう言って頭を下げた。その口調は、どこか相手を見下したような冷たい感じのソレだった。小学生の頃と変わってない。
「ご丁寧にどーも、ヨーコさんね」
“ヨーコ”といえばイギリスの往年の人気ミュージシャンの奥さんの名前として、海外でも広く知れ渡っている日本人女性の名前だ。つまり外国人が喜ぶ日本人の名前ってコト。
世の中、国際化社会ってことで最近じゃあ、自分の子供に「樹理亜(ジュリア)」とか「愛紗(アイシャ)」みたいな外人風の名前を付けるのが流行ってるみたいだけど、実際、当の外国人には「ヨーコ」みたいなごく日本的な名前のほうがウケがいい。少なくともあたしの「アイ」って名前よりは確実にウケる。
ま、そんなこと別にどーでもいいんだけどね。
「ところでヨーコさん、あたしがロムと帰ろうとしてたのに、横から割り込んでこないでもらえるかな?」
わざとイヤミな感じで言ってやった。
「ごめん、お菊ちゃんとは塾が同じで、自転車で送ってあげることになってるんだ」
「…!?」
なんで、またロムが答えるワケ?
「悪いわね」