東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
その微笑にかすかな優越感が見てとれる。

「いいよ、なにごとも早い者勝ちだし、今日はあなたにロムを譲るよ。その代わり、今度、塾がない日はあたしといっしょに帰ろ?」

「う、うん…なにも用事がなかったら…」

曖昧(あいまい)な感じの返事だった。

「じゃ、あたし、帰る。See You」

なんかつまんない。


こうなったらチーコと帰ろう。

“チーコ”っていうのは幼なじみの小菅明子のこと。

背がチビっこいから“小菅明子”の名前の最初の最後を一文字ずつをとって“小さい子”って意味で「チーコ」ってみんな呼んでた。17歳になってもあいかわらずチビだ。たぶん150センチもないと思う。

「ねぇ、チーコいっしょに帰ろ?」

もう帰り支度を終えて教室を出ようとしていた彼女に声をかける。

「アイ、ごめん。あたし、部活」

他の人(特に男子!)に「愛(アイ)」って呼ばれるのはイヤだけど、幼稚園の頃からの幼なじみのチーコたちなら問題ない。

「部活って何部?」

「陸上部」
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