東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
「ふぅん…」
そーいえばチーコは昔から足が早かった。体が小さいぶん、空気抵抗が少ないのかな?
「じゃ、ユーは?」
“ユー”っていうのは、これまた幼稚園の頃からの幼なじみの近藤 勇のこと。
父親が“新撰組マニア”で子供が生まれたら「勇(イサミ)」にするって決めてたそうだ。でも当の彼女は男みたいなイサミって名前が大嫌いで、だから幼なじみたちはみんな彼女のことを「勇(ユー)」って呼んでた。
男子の中ではロムが一番だったけど、女子の中での一番なかよしは彼女で、ふたりでよく“アイ&ユー・コンビ”なんてふざけて言ってたりしたもんだ。
小っちゃい頃から父親に厳しく剣道を叩き込まれた彼女だけに、ひょっとして今は剣道部なのかな?
「ユーも部活?」
「さ…さぁ、もう帰ったんじゃない…?」
チーコの表情がちょっと曇った。
「じゃ…じゃあ、あたし、行くから…」
なんとなく、これ以上、あたしと話したくないみたいなカンジ。
「See You」