東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
家に帰れば下に弟や妹が合わせて3人もいるせいか面倒見がよく、真面目で正義感の強い彼女は女子たちみんなに人気があって、学級委員長をやってたこともある。
前にあたしがイジワルされて“上履き”を隠されたときなんか、すかさず…、
「先生! ××くんが栗栖さんをいじめました!」
…なんて言いつけて、男子相手にも一歩も引き下がらないオットコ前の女子だった。
そんな彼女がなんで、アナンにあんなふうに言われても、なにも言い返さずに、逃げるように教室を飛び出してしまったのか、その理由があたしにはまるで分からなかった。
「ゆ、ユーっ…」
脇目もふらず、髪を振り乱して走る彼女を追いかけていくと、彼女はやがて“女子トイレ”に駆け込んだ。
コン、コン!
ドアの閉まっている個室のドアを叩く。
「ユー、急にどうしたの? 別に、おなかが痛いとかじゃないんだよね?」
「ほっといて。アイも“イサミ菌”が移るから、あたしには近づかないほうがいいよ」
ドアの向こうから彼女が答える。