東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
「それ以来、“キタナイ”とか“バッチイ”とか……“イサミ菌が移る”とか言われるようになって……授業のとき以外はずっとトイレで過ごすようになった。お昼もトイレにお弁当を持ちこんで食べてる。だって学校の中でココだけがあたしの世界だから……」
「ユー…」
なんで彼女が“トイレのイサミさん”と呼ばれるのか分かった。
「でも生理で気分が悪くて吐いたのは仕方ないじゃん。そんなことで、なんでいじめられなきゃいけないの?」
「あたし、その頃、学級委員と風紀委員を兼任でやってて、けっこーみんなにいろいろクチうるさく言ってたから、実は陰で嫌われてたみたい…」
そう言って微笑む顔が痛々しい。
「ユーはなにも悪いことなんてしてないし、ソレってタダの逆恨みじゃん。あっ、そうだ…。風紀委員やってたんなら担当の帯刀先生に相談してみればよかったんじゃない?」
「したよ…。でも先生は“ウジウジしているお前が悪い”って…。“オハヨーって大きな声で言って、ニコニコしながらみんなの中に飛び込んでいけば、みんなだって受け入れてくれる”って……」
「なにソレ? 大昔の青春ドラマじゃあるまいし。あのジャパニーズ武士道、時代錯誤もはなはだしいよ。…ったく役に立たないんだから」