東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~

パティシエの白衣を着て、料理を作る人たちのシンボルマークともいえる上に高く伸びた長い帽子をかぶって、襟に真っ赤なスカーフをしたこの男のヒトのことを、実はあたしはよぉ~く知っている。


「久しぶりだね、凱(ガイ)♪」


7年ぶりに会う彼に、あたしも満面の笑顔でお返しした。

彼の名前は“巴 凱(トモエ・ガイ)”。小学生の頃の幼なじみだ。ちなみに“凱”は凱旋門の凱と書く。

フランスにお菓子の修行に行っていた父親と、現地で恋に落ちたパリジェンヌの母親との間に生まれたハーフで、小さい頃は西洋の宗教画に出てくる天使みたいだったけど、それが今では甘いマスクの超イケメンくん♪

「近藤からメールもらって、そろそろクリスが店に来るんじゃないかと思ってたんだ」

“近藤”っていうのは近藤 勇……つまりユーのコト。

それにしてもハーフとはいえ、顔はフランス人に近い。そんな外人顔の彼が流暢に日本語を話しているのを見ると、幼なじみとはいえ、ちょっと違和感を感じないわけじゃない…。

「へぇ、凱はユーとメールしてるんだ?」

「まぁな、アイツ、ひとりぼっちみてぇだからメールくらいはしてやんねぇと…。最近会ってねぇけど、相変わらずなのか?」
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