桜の木の誓い
───
─────…
月明かりだけを頼りに夜道を走る者が一人。
(佐々木は一体どこに……!)
急いで屯所を出てきた優真は提灯も下げずに、辺りを見渡しながら先を進んでいた。
ジャラッ…
ふと足裏に感じた違和感。
何か踏んだのだろうか、そんな事を思い優真は足を止め、下を窺う。
「――っ…!」
火照った躯が急速に熱を無くしてゆくのを感じた。
何でこれがここに?
どうして?
そんな疑問が頭の中を占める中、そっとそれを掴んで持ち上げる。
月明かりに照らされたそれは矢張り、
佐々木の手にある筈の布袋──…。
「佐々木にあげた……」
ぽつりと確認する様に呟いた優真の視界の片隅に、道外れにある藪が映る。
本能だろうか。
それとも勘というやつか。
無性に其処に何かある様な気がしてならない。いや、行かなければならないと感じる。
──そして。
行って何もなければ戻ってくればいい、と優真は藪中へと入っていった。
藪中へ入ってどれ程の時が過ぎたのか分からない。月明かりも然程入ってこない。
だが言える事は、足の疲れを感じるほど入口から距離のある事。
歩いて、歩いて、ひたすら歩いて。
今着ている袴が少し湿り気をおびはじめた時。遠目に藪のない拓けた場処が見えた。
足を止める事なく、其処に近付いてゆく。
半分ほど行った処で、先程見付けた場処に紅いものが落ちている事に気付いた。
(…あれは、ぬの?)
淡い紅の布らしく、その塊が暗闇の中にちょこんと栄えていた。
自然と其処へ向く足。
ガサッとした音と共に優真は拓けた場処に出た。
そして、あの淡い紅の布の塊を視界一杯に映す。
この時、私は自分の無力さに嫌悪した──…。
─────…
月明かりだけを頼りに夜道を走る者が一人。
(佐々木は一体どこに……!)
急いで屯所を出てきた優真は提灯も下げずに、辺りを見渡しながら先を進んでいた。
ジャラッ…
ふと足裏に感じた違和感。
何か踏んだのだろうか、そんな事を思い優真は足を止め、下を窺う。
「――っ…!」
火照った躯が急速に熱を無くしてゆくのを感じた。
何でこれがここに?
どうして?
そんな疑問が頭の中を占める中、そっとそれを掴んで持ち上げる。
月明かりに照らされたそれは矢張り、
佐々木の手にある筈の布袋──…。
「佐々木にあげた……」
ぽつりと確認する様に呟いた優真の視界の片隅に、道外れにある藪が映る。
本能だろうか。
それとも勘というやつか。
無性に其処に何かある様な気がしてならない。いや、行かなければならないと感じる。
──そして。
行って何もなければ戻ってくればいい、と優真は藪中へと入っていった。
藪中へ入ってどれ程の時が過ぎたのか分からない。月明かりも然程入ってこない。
だが言える事は、足の疲れを感じるほど入口から距離のある事。
歩いて、歩いて、ひたすら歩いて。
今着ている袴が少し湿り気をおびはじめた時。遠目に藪のない拓けた場処が見えた。
足を止める事なく、其処に近付いてゆく。
半分ほど行った処で、先程見付けた場処に紅いものが落ちている事に気付いた。
(…あれは、ぬの?)
淡い紅の布らしく、その塊が暗闇の中にちょこんと栄えていた。
自然と其処へ向く足。
ガサッとした音と共に優真は拓けた場処に出た。
そして、あの淡い紅の布の塊を視界一杯に映す。
この時、私は自分の無力さに嫌悪した──…。