桜の木の誓い
この部屋も、沖田の格好も、学校も、自分の身に覚えのない場所にいたことも。
そう判断してしまうとすんなりとすべての辻褄が合う、いや合ってしまった。
頭の中にあったもやもやがすんなりと抜けていき、それと同時に心のざわめきも止んだ。 何時も以上に酷く落ち着いている自分がいる。
(そんな非現実的なことある筈がない。 …でももし、もしも江戸時代だったら…)
気になる存在感を放っている“それ”に優真は目を向けた。
「そ、その刀は本物なんですか?」
「本物に決まっているじゃないですかー。 切れない刀を持って何になるんです」
「今は何年でしょう?」
「何年? 文久二年ですけど」
前触れもなく沈黙を破った優真に沖田はさも可笑し気に笑った。
あっさりと答えられ、否定する材料がなくなってしまった。 “本物じゃない”、“平成だ”、そう言われたらどんなに助かったことか。
――もう受け入れざるおえない。
見る見るうちに険しくなっていく優真のその表情を沖田は怪訝に思い、声を掛けた。
「あの…どうかしました?」