桜の木の誓い
「…はぁ…はぁ……」
其処には竹刀を床に落とした優真が、膝をついて荒い呼吸を整えようとしていた。
そう。
負けたのだ。
優真は藤堂の突きを避ける事が出来なかった。
「無理しますねぇ〜」
突然暢気な声が道場に響き、誰かが此方に向かって歩いてくる足音が耳に入る。
「優真さん、どうぞ」
近付いてきた人物に渡されたのは水で濡れた手拭いだった。
顔を上げてみると朝から清々しい微笑みを浮かべている沖田の姿。
「…ありがとう」
幾分か呼吸が整ってきた優真が防具を脱ぎながらお礼を言うと、沖田はいいえと答えてくるりと藤堂に向き直る。
「平助、女子相手に何をしているんですか」
沖田は呆れを含んだ声で藤堂にそう言い放つ。
「剣術が出来るって言われたら試してみたくなるだろ?んで、試合してみたわけ」
あっけらかんと言ってのける藤堂に一瞬唖然とした沖田だが、ふと先程の台詞に引っ掛かる事があった。
「剣術が出来る…?」