桜の木の誓い
まずは左から斬り込んできた男の刄を鞘で跳ね返す。
次に右からもう一人の男が、隙を狙ったように突いてきたのを寸前で避け、優真は己の刀を振り上げた。
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「京にも大分慣れてきたよなぁ…あぁ、島原行きてぇ」
「そんなことはいいからさっさと帰るよ!優真と稽古するんだから」
「優真と?あいつ、独りでどっか出掛けてたぞ」
「えっ、そうなの?」
優真にちゃんと言ったのに…と藤堂は眉尻を下げてぼやく。
藤堂と永倉、それに数人の隊士は巡回を終え帰路の途中だった。ある道に差し掛かった時、永倉の表情が厳しいものへと変わった。
「平助」
「……血の匂いがするね…」
藤堂もまた永倉と同様に厳しい表情をしていた。二人は自然と刀に手をやる。
空気がピリピリとしたものに変わり、それに気付いた他の隊士も緊張の面持ちになる。
突如脇道から人が現れた。
それに直ぐさま反応した二人は刀を抜こうとするが途中で手を止めた。
「優真!?」
「なんで血が…」
その場にいた全員が優真の格好を見て驚愕した。明らかに返り血だと判る紅が優真の紺色の着流しに鮮やかに模様を描いている。