桜の木の誓い
「此処を少し行った処に二人。後始末をお願い」



抑揚のない声でそう告げながら優真は暗い脇道の方を指差す。それを訊いて何かを悟った永倉は直ぐに他の隊士に指示を出し始めた。
藤堂は優真に近付き真顔で訊ねる。



「優真………斬ったの?」

「…うん」



とうとうこの日が…。

出来る事なら優真に人を斬ってほしくなかった。一度斬ったらもう後戻りはできない。女である優真に血に塗られた道を行ってほしくなかった。苦しむ姿は見たくない。

あの時…あの時、俺が安易な気持ちで優真に試合を申し込まなければこんな事にならなかった……



藤堂は俯いて自分を責めた。知らず知らずの内に拳を強く握りしめていたのか僅かに血が滲んでいる。優真はその拳を手に取り緩ませた。



「平助、私は大丈夫だから。これは自分自身が決めた事だから。覚悟してた事だし平助が気にする事ない」



今迄無表情だった顔を微笑ませて語りかけるように優真は言った。こんなに優しい表情を見せるのも珍しい。

藤堂は顔を上げ、本人がそう言うならと無理矢理気持ちを切り替える。そして、隣でずっと黙っている少年を送るという優真と別れたのであった。
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