桜の木の誓い


「…ぅっ…」



優真は痛みで目が覚めた。

痛みの原因である斬られた左腕に目を向けると血が袖に染みを作っている。左腕は右腕を押さえ付けるように握られ、それで力が入り過ぎていたのか再び出血したらしい。

左腕を離してみると右腕はカタカタと震え始めた。

それを見た優真は小さく溜め息を洩らすと今日の事を思い出す。





平助と別れた後の優真は忙しかった。

少年を家まで無事送り届け、屯所に帰ると直ぐに近藤に呼ばれて部屋へ行った。其処には近藤の他に土方や山南もおり、斬った時の状況を説明した。

夕餉の時には、誰からか訊いたのか色々と心配をしてきた原田と沖田に大丈夫だと優真は応えた。





皆にはああ言ったけど……

斬った後から右腕の震えが止まらない。今だに斬った感触が残ってる。

永倉さんと平助にばったり会った時は焦ったけど、なんとか震えと刀疵に気付かれないでホッとした。

勿論他の皆にも。

心配をかけたくないし、こんな自分を見せたくない。


覚悟はしてた筈なのに…

これじゃあ皆を護れないよ…





優真は震える右腕を見つめ自嘲の笑みを漏らした。その表情はなんとも辛く見え、見た者は胸を締め付けられる事だろう。


暫しの間動かなかった優真だが、のそのそと立ち上がって手拭いを取ると暗い廊下へと出て行った。

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