桜の木の誓い
「はぁ…」


さっさと済まして部屋に戻ろう。
眠れそうにないけど…寝ないで朝を迎えて隈作った顔でいたら大変な事になる。

それこそ今日の事で眠れなかったんだと思われる可能性もなくはない。山南さんとかは特に気にして私を江戸に帰すかもしれない。


─それだけは絶対に嫌。





屯所は皆眠っているせいか静寂に包まれていた。そんな中で独り、優真は暗闇の中黙々と水を汲む。
やっとの事で汲み終わり手拭いを濡らしていざ血を拭こうと袖を捲った。


 ベチョ


…え?


不自然な袖の重みに優真は動きが止まった。


重い?
あ、水で濡らしちゃったかな…。

…あれ?


月明かりに映された袖が視界に入ると、先程よりも紅い染みは広がっていて。袖口からポタッと血の滴が落ちる。その先の地面にはポツポツと紅い粒があった。



私こんなに出血してたの?
てっきり血は止まってるかと思ってた…。



唖然として傷口を見ると止まる事なく紅い液体が流れている。どうやら水を汲んだ時に思いきり腕に力を入れていたせいで傷口が少し開いたらしい。


 ズキンッ


人間自覚すると痛みは襲ってくるもので。
優真は顔を歪ませた。




「何をしている」


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