桜の木の誓い
突如静寂な闇に響いた低い声。


「斎藤…」


まずい。
こんな夜更けだから誰にも見られないと思ったのに。

そんな事を思いながら優真は咄嗟に左腕を隠した。



「ちょっと顔でも洗おうかなぁって」

「…」



優真が痛みに耐えながらも平然と応えたのをよそに、斎藤は無言で近づくと優真の隠した左腕を手に取った。



「…顔を洗うのに腕を怪我したのか?」

「そ、そう。暗いからつい…」

「どう見ても刀疵に見えるが」

「…っ、違」



少し声を荒げ否定しようとした優真に斎藤は鋭い目付きを細め、それ以上嘘をつく事は許さない、とでも言ってるように睨み付けてきた。



これ以上誤魔化しても無駄…か。



「そうだよ。斎藤の思っている通り」

「…お前は斬る事を躊躇しただろ」



突然のこの言葉に優真は動揺を隠せない。だって図星をつかれたのだから。
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