桜の木の誓い
「おい、見つかったか?」
「まだです。もしかしたら今日は動かないのかもしれませんね」
「かもしれんな。せっかく訊き込みで人相は判ったというのに」
休む暇もなく捜しているせいか、皆どこか疲れた顔をしている。
今日は一先ず宿に戻るか…となった時、こちらに向かって走ってくる者がいた。
「はあ…はあ…、皆さんあちらの角を曲がった奥の店に奴等らしき者達が」
「な、なに!?それは真(マコト)か!?」
息を切らして告げる島田は相当急いで走ってきたのだろう、そんな島田に近藤が直ぐに食い付いた。
「はい、先程妙に騒がしい店がありまして確認してみたところ、例の人相をした男達が亭主に金を要求しておりました」
「おそらくそいつ等で間違いなさそうだ…」
「ならば近藤よ、急いで参るぞ」
「はい」
今まで黙って聞いていた芹沢がパチンッと鉄扇を閉じて近藤に言うと、近藤は真剣な表情で頷いた。
皆、早急にその店へと走る。
店に着くと丁度、男達が亭主から金を受け取って満足そうに帰るところだった。
それを見て亭主は悔しそうに拳を握り締めて男達を眺めている。
「待ちなさい」
近藤がよく通る声で立ち去ろうとする男達を止めた。
それからの壬生浪士組の動きは速かった───。
男達に金を返すよう言うと、「我らは壬生浪士組ぞ」と叫び斬りかかってきた男達をいとも簡単に気絶させた。
その気絶している男達を縄で縛り奉行所へと運んで、この偽壬生浪士組事件はあっけなく幕を閉じた。