桜の木の誓い
「意外と早く片付いたよな〜」
永倉が船に凭れて川の流れを眺めながら言った。その言葉に沖田は「そうですね〜」としみじみと言う。
そんな二人の会話を聞きながら優真はゆっくりと変わる景色に目を向けた。
大阪での仕事が終わった近藤を除く一行は、涼みに舟遊びをしようと堂島川にきていた。
舟に揺られながらそれぞれ涼みを楽しむ。
と、突然斎藤がお腹に手を当てて蹲った。
「うぅ…」
「どうしたんですか!?斎藤さん、大丈夫ですか!?」
「は、腹が……」
斎藤の異変にいち早く気付いた沖田が斎藤のもとへ寄った。
…ん?
どうしたんだろう?
気付いた優真も斎藤の様子を窺う。
他の者も気付いたのか、ざわざわと舟の上は騒がしくなった。
「大丈夫かい?」
「だ、大丈…夫です」
「いや、でも顔色も少し悪いみたいだ。一旦舟を降りて休んだほうがいい」
山南が心配そうな表情で言った。
確かに山南の言う通り斎藤の顔色は悪い。舟の上にいるより、どこかで休ませたほうが良いだろう。
「仕方がない。降りるぞ」
山南の言葉を聞いた芹沢はパチンッと音をたてて鉄扇をとじると、鍋島岸へ舟をつけさせた。