桜の木の誓い
言い足りないのか、まだ何か言おうとする力士達をその場に残して優真達は近くの店に入って休むこととなった。



座るなり呑み始めた芹沢。

こうなったら誰にも止められない。

芹沢と何時も行動を共にしている平山と野口以外の者は、酒が入った芹沢が暴れないことを願いながら心の中で深い深い溜め息を吐いた。





それから暫く経った頃──。

突然外が騒がしくなったのに優真は気付いた。


「総司」

「はい?」


盃に入った酒をちょびちょび呑んでいた沖田は少し赤みを帯びた顔を優真へと向ける。


「…外が騒がしい」

「誰かが暴れているんじゃないんですか〜?そんなことより、優真さーん!これ美味しいですよ〜!ウフフ……」


……完全に酔ってる。


へらへらと笑いながら優真の盃へお酒を注ごうとする沖田に優真は口元を引きつらせながら苦笑いを洩らした。


こんなにお酒弱かったんだ…。
あー…盃から零れてる零れてる。

どうしようか。
総司に言っても酔ってて話にならないし。何か嫌な予感がするんだけど…。


優真がそんなことを思いながら沖田の零したお酒を拭いている間にも、外の騒がしさが酷くなっているようだ。


──ん?


ふと外から聞こえたある言葉にせっせと拭いていた手を止め、優真は外から聞こえる声に耳を傾ける。





今、壬生狼って聞こえたような…──。


と、ドタバタと荒々しく走る足音が優真達のいる部屋へと近づいてきた。
< 77 / 136 >

この作品をシェア

pagetop