ふしだらエデュケーション
これは危険きわまりないトラップだわ。

まさしく肉欲の罠。

むろん、回避するのは造作もないこと。

見て見ぬ振りをすればいいだけなのだから。

けれど、それは逃げていることにならないかしら?

生徒が落とした消しゴムを拾ってあげるというごく当たり前の、人として持ってしかるべき親切心をないがしろにする行為だと言えるんじゃないかしら?

……逃げない。私は逃げないわよ、和久井君。

先生、負けないんだから――。


その場で四つん這いになった。

和久井君のほうにお尻を向け、くいっと腰を高く上げる。


「このへんに……消しゴムを落としたわよ、和久井君……」


さあ、ご覧なさい和久井君。

諸見里すみれのあられもない姿を心行くまで観賞しなさい。


「確かこのへんに……消しゴム……消しゴム……」


お尻を左右に振りながら、視界にある消しゴムを見ないようにして床を探す。
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