未定
俺は基本ずっと家にいる。一日中。ちなみに21歳。大学は行ってない。バイトもしてない。・・・勘違いしないでほしいのは、俺は決してニートなんかじゃないってこと。

家はちょっと古い木造アパート。ひとり暮らしだ。部屋から見える景色は山と川と田んぼ。うん、田舎だ。でも俺はとても気に入っている。仕事柄、静かな方がはかどるから。

一日中パソコンに向かい、あーだこーだとキーボードを打つ。画面にはびっしりと文章が表示される。俺の頭の中で思い浮かぶエピソードが文字になって画面を埋めるのだ。

本名は土田春樹。 ペンネームはハルキ。


そう、俺は、小説家をしている。



しかし、さっきはホントに驚いた。つーか痛かった。早朝にゴミを捨てるのは俺の日課なわけだが、人に会ったことなど一度もなかった。大家のおばあちゃんは結構早起きだけど俺よりは遅い。だから、ゴミ捨て場に人がいるって気付いた時は正直誰だろうと気になった。でも、いくら気になるにしてもまじまじ見ることはできない。
だから普通に、自然に、むこうがこっちに気づいたら挨拶でもしようぐらいのノリでゴミ捨て場に向かったのだ。

そしたらいきなりだ。パンッという音と痛みが俺を襲った。もうなにが起こったのかわからない。気がついた時には彼女はアパートの階段を駆け上がっていた。つまりだ。

今朝のビンタ女は同じアパートの住人だということ。なんということ。オーマイガッ。

というか何故俺は彼女のことを知らない?同じ階なのに。言っとくが、俺はこのカスミ荘(アパートの名前)の住人全ての人の名前と顔を把握済みだ。引っ越してきたときにはちゃんと挨拶に行ったし、年に何回かあるカスミ荘主催のイベント(スイカ割りとか)で皆さんと顔を合わせて仲良くなった。なのに彼女だけは知らない。
初めて見た。あれか?今朝引っ越してきたのか?でも荷物とか運んでいる様子はなかった。じゃあ下見?もうすぐ引っ越してくるのか?それにしたって不自然すぎる。だって今
朝ビンタしたあと二階に行ったきり、でてこない。おかしい。大家さんに聞いてみようか。でもなんて?”僕と同じ階に新入りの女性はいますか”って?だめだめ、なんかあやしい。男性ならまだしも、女性だからなあ。ちょっと抵抗あるよね。・・・・・・うん、もう気にしないようにしよう。


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