アクリルの向こうのブルー
海の黒い

海軍の街で、

碧依は育った。


透き通る碧の

あの海の島は、

碧依の母の故郷だ。

だから碧依は小さい頃から、

夏休みは島で過ごした。



育った街の海の黒さに、

碧依は驚き、

そして怖くなった。


碧依の知っている

黒い海は、

水族館の深海コーナーの水槽だった。

この街の海は、

足元なんて透けて見えない

砂浜も黒く、

闇がうねっているようで、

時折、闇に 白い泡が立つ。

“あの海の中には、
  暗い水槽の
 あの 怖い魚がいるんだ”

碧依は この街では

海水浴などしなかった。

足元が見えない海は

恐かった。

そして、

泳げなくなった。

黒い海が怖いから、

黒い海には入らないように

泳げない事にして…

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