Butterfly's dream ―自我の境界線―
 しばらく間を開けると瑞樹がその答えを待つようにじっと橘の瞳を覗き込む。

 その瞳の熱さをしっかりと感じた橘は静かに続けた。



 「…どっちなのかわからないという話。」



 人を食ったようにサラリと結論を述べる橘に瑞樹が唇を尖らせる。



 「荘周は人じゃないの?」

 「人かもしれない。でも蝶々が人になった夢を見ただけかもしれない」

 「意味が分かんない」



 ああ、確かにこんな小さな少女には難しい話かもなと思った。

 だけどこれは必要な、瑞樹にとって近道になる話である。
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