Butterfly's dream ―自我の境界線―
 「結局はね、何が現実なのかっていうのは誰にも分からないんだと思うよ。だから瑞樹ちゃんみたいに確証…つまり答えだね、『答え』が欲しいと人は思うんだ。だけど他人が太鼓判押したところでそれはその人の太鼓判であって本人の太鼓判じゃない。だから」



 そこで橘は口をつぐんだ。

 サァッと新緑の香りを含んだ薫風が吹き抜ける。



 「自分が、自分であると思えばそれが現実なんだと思う。」

 「じゃあ瑞樹が、花壇のお花がきれいだな、花びらを触って柔らかいな、って思えたらちゃんと現実に生きてるって思っていいの?」

 「そうだよ」

 「パパやママが…瑞樹に会いに来てくれなくて淋しいと思うのも?」

 「…そうだよ、淋しいと思う気持ちを感じるなら君はここに存在している証拠だ。けして瑞樹ちゃんが存在しないからパパとママは知らん顔してるんじゃない」
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