Butterfly's dream ―自我の境界線―
 「確実に、私はあのボタンを押した。人を殺した」



 声にする。

 事実だと思う。

 だけれどもこの実感の無さは何なんだろうか?


 そう自問して橘は自分の掌を見やる。

 ちゃんと目の前に見えて存在している。

 流石に20代の娘のように張りはないが年相応の、手術慣れしたメスダコのある医者の手だ。
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