Butterfly's dream ―自我の境界線―
 だが目の前にある手は見えているにも関わらず実感はない。

 両手を組み合わせ質感を感じるけれどもどこか遠くに感じ橘は溜息を吐いた。


 この所在がはっきりしない自我こそこそディスプレイの中の老医師が言っていた蝶々の夢なのかもしれない。

 ならば現実味の感じられない自分はこの世に存在していないのだろうか?


 そんな風に思いながら先程ボタン1つで行った『人殺し』という業に対して現実味を疑う。

 客観的事実として彼女のデスクの上には加藤瑞樹のカルテがあった。
< 22 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop