Butterfly's dream ―自我の境界線―
 『11月24日16時13分・延命処理中断』


 カルテにはっきりと書かれたその文字の羅列を見て橘は確かに瑞樹の両親の決断に従い、医療行為の名の下に彼を殺した事を認める。


 「認める」が、彼女に実感は無い。

 実感と同じく罪悪感も希薄だった。責任転嫁する気も無く瑞樹の両親を非難する気もない。

 3年もの間、植物状態の患者を抱えるというのは精神的にも経済的にも想像を絶する苦労と苦痛である。

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