Butterfly's dream ―自我の境界線―
 「パパとママは瑞樹のことよりもお仕事の方が大事なんだもん!」

 「そんなことないよ、瑞樹ちゃんが元気になるために頑張って働いて―――」

 「でも電話も、…お誕生日のプレゼントも忘れてるよ!3ヶ月も過ぎたのに!」



 その言葉に流石に橘も言葉が詰まる。

 瑞樹の両親は二人とも世界を股に掛ける有名な演出家と女優だった。収入だって良い。

 彼女への治療費・入院費は滞ったためしはないし、それどころか「心付け」として病院に治療費以上の金品が贈ってくるほどだ。

 橘が鑑みるに著名人である故に対面良くしておくためのものだろう。


 だがこんな幼い娘を蔑ろにしてまで保つ対面であろうか。

 それを思うと瑞樹が不憫でならない。
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