Butterfly's dream ―自我の境界線―
 そんな豊かな自然を見ながら二人はしばしぼんやりと目の前にあるものを楽しんだ。

 そして頃合を図った橘がそっと瑞樹に語りかける。



 「…瑞樹ちゃん、淋しいんだね?」



 しばらくの沈黙が落ちる。じっと見つめていているのに耐えきれなくなった瑞樹の視線が足元に落ちた。



 「…しくない」



 屋上を駆け巡る春風のせいで消え入りそうな言葉尻が橘の耳に幽かに届く。
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