かくしご
 少し時が流れた。

 ある春の日。
 
 みつは、2階で洗濯物を干していると、
自分の家の前を何度も往復する人がいるのに
気が付いた。

しばらく様子を見ていたが、
そっと下に降りて行き、外へ出ると 
相手の女性を目が合い、ひどく相手が驚いていた。

 「脅かしてすみません。
 そんなつもりじゃないんですが。」

 「いいえ・・・。」
 
 「あの、うちにご用でしょうか?」

 「はぁ。」
と下を向き、しばらくの沈黙の後、やっと声がした。

 「私じゃないんです。妹の美代子のことです。」
とかすかな声がしたが、みつには、何の話か分からなかった。
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