かくしご
 叱られている少女を前に
話しているような格好になり、
向かいの奥さんが、
こちらの様子をうかがっているのが見えた。

 見知らぬその女性をとりあえず、
玄関口に入れて、戸を閉めた。

 そして彼女の途切れ途切れの話で、
夫が、この人の妹を妊娠させたという事実を知った。
そしてその美代子という女は、
 《 一人で育てる。》
と言い切っているということだった。

 でもなぜこの人は、ここに来たのだろうか。
お金が欲しいのだろうか。
どのくらい渡せば帰っていくだろうか。
自分の出せる金額は、たかが知れている。
こちらから言えば、不利になる。

と考えているうちに、
 「すみません。
 お水を1杯いただけますでしょうか。」
という声にみつは、我に返り、
台所から、コップに入れた水を運んで来た。

 その女は、ゆっくりと飲み干すと
 
 「突然失礼なことを話しました。
 聞いていただきたかったまでです。」
と言いながら、また頭を下げ、
うつむき加減のまま外へ出て行った。


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