かくしご
 「びっくりしたの?
 どうしてかしら。」
 驚くことじゃないでしょ。
 あなたが種蒔いて、実ったのよ。」

 「これからどうするんだ。」

 「かわいいでしょ。
 美しい女優にするからね。 
 それがあなたに対する復讐よ。」
と言い、高い声で笑いながら
さっさと遠ざかって行った。
 
 「おいっ。」
信太郎の声は、意味をなさかった。

信太郎の耳には、周りの雑音がすべて
聞こえなくなり、
美代子の笑い声だけがいつまでも残った。

銀座の街中で一人ぼんやり佇んだ。
だんだん体の力がなくなり、
しゃがみ込んでしまった。

 「どうされましたか。」
と初老の人に声をかけられて、
慌てて、立ち上がり頭を下げ歩き始めた。
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