かくしご
 そんな春めいた日に その女は、訪ねて来た。  

 「あの。この子が信子です。」
とかわいい女の子を連れて来た。 

くりくりした目のかわいい子で、人なつっこそうな笑顔だった。 

女の子のいないみつは、つい
 「あら、かわいい子ね、何歳なの?」
 「よっつ。」
と連れてきた女の用件も聞かずに 声をかけてしまった。

しかし、その女からは、冷淡な用件を言い渡される。
 「ご主人から何も聞かれていないですか? 
 美代子の姉ですが、この子の母親が、
 自殺をしたので、引き取ってください。」

みつは何を言われているのか、
のみこめないでその女の顔をぼんやり見てしまった。

そんなみつにはお構いなしに 
女は、頭を下げ、その場を逃げるように立ち去った。

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