かくしご
 終戦間もない日本は、
食糧事情がひどく悪かった。 

そんな時期に、女手は、すごくありがたかった。 
たとえ芋粥でも 父が作っていた頃とは、
比べられないほどだった。

 それから間もなく、妻みつは、子供を宿した。

 さらに食糧事情が悪くなったが、
胎児が、栄養失調では、情けない。 
しかし、嫁の立場では、
ガツガツ食べるわけにもいかないだろう。
 
 「おい。おれの荷物は?」
と 仕事帰りにこっそりと手に入れた
キャラメルをみつに手渡した。

 「どうしたんです?」
 
 「いいから、みんなに見つからないうちに食え。
お前が食べるんじゃない、おなかの子供の分だ。」

 「まぁ。ありがとうございます。」
と口に運んで、涙ぐんでいた。

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